I犬オタクになる人生のきっかけには、必ず、人以上に仲良しになった犬(達)の存在があります。そんな運命犬との出会いはどんなものなのでしょう?今も一緒に暮らしている子、お別れしてしまったけど、いつでも思い出すあの子。どの運命犬ストーリーにも、心がジュワッと暖かくなるような感覚を持つのは私だけでしょうか。
自信の運命犬との出会いを『芽萌』が少し雰囲気を変えて小説風にアレンジ。動物に囲まれて暮らす彼女が、まさかの動物嫌いだったとは信じ難い、運命を変えた運命犬と出会うまでをお届けします。
メモ
〜運命犬との出会い<前編>〜
動物なんて嫌い
小学生に上がろうというころ、
私は動物が嫌いだった。
臭いし汚いし。
なにより、
隣に住んでいた
祖父が飼っていた
ドンという雌犬が
怖かった。
だって、
触ろうとすると
噛み付こうとするし、
横をすり抜けようとするだけで
うなるのだから。
うさぎのピョン
私の動物嫌いを危惧した母は、
地元の秋にある大きな祭で
クジの景品にされていた
大人しいうさぎを
クジもせず、
頼み込んで買い取った。
あの時、
母が屋台のおじさんに
いくら払ったかは
今でも分からない。
そのうさぎは大層懐いて、
家族が外出する時は
ケージで立ってお見送り。
よくケージから抜け出しては
家族団らんの席に
参加しようとする、
珍しいうさぎだった。
私の動物嫌いは
ピョンのおかげで、
小動物のみ
緩和されていった。
ピョンのケージは
抜け出せないように網をして、
時々出して
遊んであげていた。
ピョンはもう
良いか悪いか分からないが、
自力では抜け出せなくなっていた。
母親参観日
ある日、
妹の通っていた
幼稚園のスイミングスクールで
母親参観日があった。
母はそれに参加すべく、
ピョンのケージを
日光浴できる玄関に
出しておいた。
だって、
もうピョンは
抜け出すことは
できないのだから。
帰宅した母が見たものは、
こじあけられた網と
少し抜け落ちた
ピョンの毛、そして少しちびった跡。
ピョンはケージにも
庭にも
どこにもいなかった。
探せばまだ…
母は思案した。
どうやって私に
その事実を伝えようか。
しかし彼女は勇敢にも
ありのままを私に伝えた。
探せばまだいる!と
探しに走り出そうとする私を、
母は
「お母さんたちで
沢山探したけど
みつからなかったの」
と引き留めた。
母はあの時、
どれだけ
ピョンを外に出したことを
悔いただろう。
ピョンは、
何に攫われどうされたか、
未だに分からない。
家族の見解としては、
庭によく来る大きなカラスが
食べてしまったのだろう、
ということだった。
私は母と、
亡骸の無いお墓を
庭の隅に作った。
少しだけ残されていた
毛を入れて。
動物好きな妹
私と違い、
妹は本当に
動物が好きだった。
隣のドンに噛まれて
指を数針縫うことになっても、
彼女の動物好きは
変わらなかった。
野良犬でも
野良猫でもお構いなしに
触りに行っていた。
彼女は
今でも動物が大好きで、
よく迷子犬や
事故に遭っていた犬などを
拾ってくる。
私はというと、
やはり犬だけは怖かった。
犬嫌いなわたし
そんな私を、
幼少期から
動物に囲まれて育った母は
ずっと気にしていた。
どうにか
犬を好きになってほしい。
そこで母は、
私の同級生で
柴犬のブリーダー
をしているお宅に
お邪魔することにした。
柴犬の子犬
その日、
ジャイアンのような
ガキ大将の子の家に行く
と聞いた私は
ただただビクついていた。
その子の家には
沢山の柴犬の子犬がいた。
「どのこが可愛い?」
とおばさんは私に聞いた。
「あのこ」
私が指差したのは、
まるまるとした
他の柴犬と
全く違う容貌をした
犬だった。
同級生が嬉しそうに
「あいつは、
あんまんって
呼んでるんだ」
と言った。
あんまんは、
なんだか穏やかで
子犬でさえ怖かった
私でも触れた。
ファーストドッグ
後日、
あんまんは
うちの子となった。
あんまんは
生まれつき食道が細く、
食べ物を
一度よく咀嚼してから吐き出し、
それからもう一度食べないと
いけない子だった。
また、
食道のせいか
鼻水が常に出ており、
くしゃみもひどく、
屋内で飼うには難しい為、
庭で飼うこととなった。
幸い、
我が家の庭は広く、
リードで繋がれているとはいえ
あんまんは、
広い陣地を手に入れた。
私の犬、あんまん。
あんまんは
私の犬という扱いになり、
名前を決めろと言われた。
私は、
50音のマ行で
自分の名前のミムの
残りのメ・モ
を名前にしようと思った。
ここで、
あんまんは『メモ』になった。
メモは
その名前になって
どう思っただろう?
名前を紹介すると
「変わった名前だね」
と毎回言われ、
由来を説明していたりもした。
きっと多くの人には
興味のない話で
あっただろう。
他の犬とは違う犬、
メモは私と
どんどん仲良しに
なっていった。
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